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「そうそう、あなたはセヴィニエ夫人をお読みですのね。はじめてお着きになった日から、あなたがその「手紙」をおもちになっているのをお見かけしています。娘のことをいつもあのように気にかけるのはすこし大げさだとお思いになりませんかしら。あまり言い過ぎるとかえって真情が出ませんのね。自然らしさがかけるのですわ」祖母は議論しても無駄だと思った、そしてわかりもしない人のまえで、自分が愛しているものの話をしなくてはならない羽目に陥るのを避けるために、「ボーセルジャン夫人の回想録」をハンドバッグの下に隠した。
p.15、マルセル・プルースト(井上究一郎訳)、失われた時を求めて 第2篇 花咲く乙女たちのかげに I