1.のような意図はあるかもしれませんが、当初の予定では NEC(+日立)と富士通が理研の選定したベンチマークで性能見積を行い、コンペして1本に絞るという計画でした。
これが政治的な理由で NEC と富士通を折衷したハイブリッド機になったのです。逆に元々単独で予定性能を達成する計画であったので、NEC が抜けてそこに戻っただけとも言えます。
6. ですが、富士通は最初から SPARC64 で作る計画を出していました。
SPARC の命令仕様を決めたのは Sun ですが、富士通の作っている SPARC64 チップは独自設計のものです(元を辿ると米HAL研が関わってきますが)。これは x86-64 命令仕様に基づいていても AMD と Intel の CPU が別物なのと同じです。少なくとも次世代スパコンに SPARC を使うのと Sun はほとんど無関係です。
# 二つの CPU が異なる例証としては、
# Sun の UltraSPARC 系は Out-of-Order 実行ができませんが、
# 富士通の SPARC64 系は OoO 実行が可能だということがあげられます。
# 内部のマイクロアーキテクチャが完全に別物なのです。
また「半導体の基礎研究をしてなかったんだから仕方ない」とおっしゃいますが、日本のメーカーの中には半導体デバイスの基礎研究をしているところは多数あると思います。実際、京速計算機に使う SPARC64 VIIIfx も富士通のファブですよね?
また 7.の「世界の趨勢は、x86-64 なマシン、つまり普通のパソコンの凄い奴、だってその方がアプリケーション開発楽だから」も違います。
まず High Performance Compunting(HPC) プログラムは、3D ゲームプログラマーがやるような SSE 命令をインラインアセンブラでゴリゴリ書くようなことは基本的にしません。基本的には Fortran や C で書かれたプログラムを、そのスパコンに特化したコンパイラを使ってコンパイルして実行します。
# スパコンを使うのは計算機屋さんだけではなく物理屋さんだったりします。
# また Fortran コンパイラは賢いので CPU に特化したゴリゴリ最適化が割りに合わないのが理由です。
通常はプログラマは C や Fortran のソース中に MPI や OpenMP あるいは専用のディレクティブで並列箇所を指定し、残りの並列化はコンパイラが担当します。従って HPC プログラマは「SPARC に最適化されたプログラム書け」なくてもスパコンを使うことが可能です。少なくとも SPARC のレジスタ・ウィンドウや命令セットを知る必要はないです。
# 私も SPARC 用の C コンパイラを書いたことがありますから「SPARC という旧弊な
# 使い辛い CPU」とは痛いほど同感しますが、今回の問題はそこにはないと思います。
逆に言えば並列コンパイラや HPC アプリの並列技術がスパコンにおける「基礎研究」になります。この点は富士通/日立/NECのようなベンダには相応の蓄積があると思います。
# 例えばプロジェクト自体は終了しているものの Advanced Parallelizing Compiler
# (APC) のプロジェクトがありました。日立と富士通がこれに参加しています。
# 簡単に言えば Fortran ソースコードを並列化れた Fortran ソースに変換する
# というもので IBM/Sun/SGI のマシン上で最大 30 倍近い性能を実現しています。
# http://www.apc.waseda.ac.jp/
またスパコンの作り方なのですが、ベクタ、スカラー、クラスタと様々にあり、最近だとコモデティ部品を組み合わせたクラスタ計算機が世界の主流なのは確かです。ただ方式により長短があることが重要です。これは筑波大の朴先生の資料がまとまっていて分かりやすいです。
http://www.psi-project.jp/images/event/taisuke_…
P.10にある「演算性能(FLOPS) : メモリ性能(B/s) : ネットワーク性能(B/s)」がキーになります。Intel CPU はメモリ性能比が弱く、Infinband や 10GbE などのコモディティ部品を使うとネットワーク性能比が悪いです。一方、価格の高いスパコンはメモリ性能やネットワーク性能を重視します。
# IBM は BlueGene/L はバランスがよい。京速計算機の富士通側は BlueGene/L の構成に近い。
HPC アプリによってどこが重要視されるかのバランスは変わります。
スパコン世界一を決める SC TOP500 は 巨大2次元行列の逆行列を求める計算 Linpack ベンチマークを使います。Linkpack はネットワーク性能やメモリ性能がそれほど重視されず CPU の演算性能がそのままスコアになるベンチマークです。
一方、次世代スパコンは理研の研究を支えるためにあり、理研は以下のようなベンチマークを高速実行させようとしています。
http://www.nsc.riken.jp/target-application/targ…
この中にはメモリ性能やネットワーク性能を要求するものがあり、理研の要求をかなえるのであればあまり安くはできません。
もちろん、理研の要求する性能が理研の研究成果に見合っているのかとか、クラスタ型スパコンでも運用方法でカバーできないかという疑問があります。
最後に「こういう情勢で、例のスーパーコンピューターを国の金で作るべきとか言ってる人は頭おかしいか富士通や Sun の利害関係者なのではと思う」という意見ですが、京速計算機の調達価格が高いのは単にスパコン世界一を目指しているのではないのでそれなりの理由はあると思います。とはいえ私個人も理研の要求に答えるだけのちょっと特殊なスパコンを作るのはどうかと思っていました。
ただ今回は富士通も NEC も国から持っているお金以外にかなりの持ち出しをしていることが話を中止を難しくしています。お上に「世界一のスパコンは広告効果があるし、京速計算機を作るために使った技術は他で商売ができるでしょう」という理屈で持ち出しを強いられたと聞いています。しかし計画を延期すれば「世界一」の称号を落すのは確実ですし、もともとスパコン市場は狭く理研の要求に答えた過剰スペックマシンは売れません。途中で逃げた NEC はともかく富士通に対して「あれ中止になりました」では済まないです。
個人的には計画は中止にして、富士通は持ち出し分を損害賠償してもらった方がよいと思っています。
以上、長文失礼。
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このひと?>http://www.nminoru.jp/~nminoru/diary/current_month.html
半導体の基礎研究とか、半導体の国際学会に富士通にしろNECにしろ東芝にしろ論文をたくさん通している事実があるのですが、、、まあ